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怒涛の翻訳例辞書

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※当辞書はβ版です
当辞書は現在実験段階のβ版です。不完全な内容を含む場合がございます。もし誤字脱字・テキストの切れ等がございましたら、こちらまでご連絡頂けると幸いです。

※免責事項
本訳例辞書の利用により、利用者または第三者がいかなる損害を被っても、弊社は責任を負いかねますので予めご了承ください。

【出典】
弊社オリジナルの辞書に加えて、 技術分野については科学技術振興機構(JST)、文芸・出版翻訳については、青空文庫 、杉田玄白プロジェクト、SOGO_e-text_libraryから対訳を収録しています。詳細はこちらです。

 
当辞書のコンセプトと「10億訳例プロジェクト」
 
 「怒涛の訳例辞書」は普通の辞書ではありません。翻訳支援ツール TraTool.netに搭載の参考対訳の一部を抜粋した特有のコンセプトによるものです。以下は、そのコンセプトとプロジェクト背景の説明と使用方法についてのガイダンスとなるですので、是非ご一読ください。
 
1. 従来の辞書では、外国語の翻訳やライティングはできない 〜チャンク理論〜
 従来の辞書は、単語が大体どういう意味を持っているかを知るには役立つけれど、外国語の翻訳やライティングをすることはできません。なぜでしょうか?それは、単語単位を訳して並べてもまともな言語にはならないからです。辞書は単語を中心につくられ、連語や例文がついていてもおまけ的な扱いです。言語は、実は単語単位というよりむしろ「意味のかたまり」(以下「チャンク」と呼ぶ)の単位で成り立っているのです。従来の辞書の発想をひっくり返し、逆に連語や対訳文を中心にしたのがチャンク訳例というコンセプトです。

 ”Good morning”を単語単位に分けて「良い朝」と訳す人はいません。”Good morning”の一かたまりで「おはよう」という意味になることは誰もが知っています。ところが、このように簡単な定型フレーズ以外については、なぜか単語単位での翻訳になってしまい、不自然な訳文ができてしまいます。同じことが外国語のライティングにもいえます。
 「損益分岐点」を英語でどういうか?チャンクとして”break‐even point”を知らない人は単語単位で訳して並べようとします。「損益」が”profit and loss”、「分岐点」が”turning point”、これをつなげて”profit and loss turning point”。不自然な英語ができあがります。

 このように元になっている言語(以下「ソース言語」と呼ぶ)から翻訳する言語(以下「ターゲット言語」と呼ぶ)に変換した結果、見かけはターゲット言語だが実はソース言語の構造を引きずっている中途半端なものを「中間言語」と呼ぶことにします。中間言語は、単語単位ではソース言語に対応しながらも、ターゲット言語のチャンクとしてみると、ネイティブが見てとても不自然なものとなります。

 “For your safety, don’t put your head out of the window.”という英文を単語単位で訳して並べると「あなたの安全のため、あなたの頭を窓から出さないでください」になります。まるで外国人留学生が日本語にしたような不自然な日本語ですね。日本語のようで日本語ではない、中間言語です。自然な日本語ならば「危険ですから、窓から顔を出さないでください」といいますよね。”For your safety”という英語のチャンクは、「危険ですから」という日本語のチャンクに訳すことができます。”for”=「〜のために」、”your”=「あなたの」、”safety”=「安全」というように単語単位を置き換えていく方法では、「危険ですから」という訳は出てきようがありません。”For your safety”をチャンクとして「危険ですから」と訳すことができるのがわかれば、”For your safety, don’t rush into the train”は「危険ですから、駆け込み乗車はおやめください」というように応用が利きます。”head”が「顔」になってしまうのも単語単位を翻訳するという考え方ではありえません。日本では窓から出すのは「顔」であり、英語では「頭」(ちなみにフランスでは「首」らしい)。これらがチャンクというもので、単語単位の翻訳や文法的な規則では説明できません。

自然な言語は、「単語」というより「チャンク」で成り立っている。


2.単語を辞書で引いて文法どおりに並べ替えることが翻訳ではない
 外国語の翻訳やライティングは単語単位ではできないという理由は、チャンクだけではありません。多くの場合、自然な翻訳では、一つの単語が文脈によって千差万別に変化を遂げます。

”I know him.”

 学校の英語の授業では「私は彼を知っています」と習います。単語単位ではピッタリ英日が対応しているし、文法的にも問題はありません。しかし、プロの翻訳者はそんなふうには訳しません。実際の翻訳では、「あたしその人を知っているわ」 「拙僧はその御仁を存知あげております」 「あの方だったのね」 「俺はルパンにあったことがあるぞ」等等、劇的に千差万別な変化を遂げます。

もう一つ、“Give it to me.”

 「私にそれをください」ではなく、「それちょうだい」 「そいつを渡してもらいたい」  「その薬を飲ませてください」 「電話を代われ」 「お父さんに貸してごらん」等等、これまた、文脈によって千差万別な訳になります。単語単位で翻訳では想像もつかないような変化ですね。 “Give it to me”と「お父さんに貸してごらん」のペアなんて、単語単位でみると、giveが貸す?meがお父さん?itはどこいった?てなことになってしまいます。

 学校の英語では、言語は「単語を文法規則通りに並べるもの」という大前提があるのです。従来の辞書も同じ前提のもとに成り立っています。それはそれで良いのです。英語の文法構造を勉強するのが目的であれば、“Give it to me”は「私にそれをください」とした方がわかりやすいでしょう。しかし、翻訳の世界では、学校の英文和訳の方法をそのまま使うと大変なことになります。英語の授業で教わった「単語を辞書で引いて文法どおりに並べ替える」というお馴染みの手法は、翻訳の世界では通じないのです。

「単語を辞書で引いて文法どおりに並べ替えることが翻訳ではない」
これをわかることが翻訳への道の第1歩です。

「辞書が使えないのはわかった。ではどうすればいいの?」という声が聞こえてきそうです。

3.チャンク訳例が翻訳とライティングの強力な武器になる
 「辞書が使えないと言われても困る」と思いますよね。その通りです。困るというのが正解です。だから、翻訳者は大変な苦労しながら、チャンクや参考となる訳例を探したり、長い時間をかけて推敲して自然な訳文を創作しているのです。

 外国語でのライティング(日本語から外国語への翻訳も同じ)ともなると、それは、それは、超難題です。英語が相当できる人、TOEIC900点の人でも、英語をライティングしてネイティブに見せると真赤に添削されます。そして、その問題の多くは文法ではありません。文法的に正しい英語を書くだけなら簡単です。問題はチャンクです。ターゲット言語のチャンクとして自然かどうかが問題なのです。ここでノンネイティブとネイティブの差がでます。

 例えば、「可能性がある」という表現を英語にするときに、日本語的発想だと「可能性(possibility)が「ある」(There is)わけだから、"There is a possibility that 〜"としたくなります。ところが、英語では"主語+may" の表現の方が圧倒的に自然なんですよね。"may" は学校では「かもしれない」と覚えましたけど、実務翻訳ではむしろ「可能性がある」という意味でmayを使う場合が多いのです。
 また、may以外の例では、「○○は新たな標的となる可能性がある」を"○○ is a possible new target”というふうにpossibleで表現するなんていう場合もあります。これを逆に日本語に辞書で単語訳すると「○○は可能な新しい標的です」なんていうヘンテコリンなことになってしまいますから、日本語的発想ではなかなか想像できません。むしろ、”There is a possibility that ○○ becomes a new target”という方が日本人的にはしっくりきます。でも逆にネイティブには"○○ is a possible new target”の方がしっくり来ます。これがチャンクというものです。
 このようなちょっとしたことでも、英語と日本語での訳例があると「ああ、なるほど!」と思ってしまいます。私も「可能性がある」をチャンク訳例でサーチしたときに、mayやpossibleが使われる例が多いのを見て、目から鱗が落ちるような感動を覚えました。

4、プロ翻訳を手本として利用するという新しい発想
下表は、左が英文、右の上段は通常の辞書を使って単語単位で訳されたもの、下段は TraTool(訳例辞書)を使ってプロの翻訳表現を参考に訳したものです。

“I just want somebody to talk to.”
「私はただ話かける誰かが欲しいだけです」

「僕はただ話相手が欲しいだけなのに」
Mike said in an imploring voice.
マイクは懇願する声で言いました。

マイクは泣きそうな声で言った。 
“No, a hundred times no!”
「いいえ。百回いいえです!」

「だめ、絶対にだめです!」 
“Stop this moment, I tell you!”
「この瞬間にやめなさい。あなたに言います!」

「いますぐやめなさい、いいわね!」
He didn't draw a deep breath until she went out for a walk.
彼は彼女が散歩に外出するまで深い呼吸をしなかった。

マイクがほっと一息ついたのは、母親が散歩にでかけてからだった。
Mike slyly hid one of her most treasured shoes under the bed.
マイクは、ずるく彼女の最も大切な靴のなかの一つをベッドの下に隠した。

マイクは、こっそりと母親が一番大事にしていた靴の片方をベッドの下に隠した。
“How does that strike you?”
「それはあなたにどういう印象をあたえますか?」

「どうだ参ったか?」
“He began rather timidly.”
彼は臆病に始めました。

ジョンはおそるおそると切り出してみた。
He is an ignoramus!" shouted Mike.
「彼は無知な者です!」と彼は叫んだ。

「あいつに何ができる!」 マイクは叫んだ。
“His help is ridiculous and mischievous.”
「彼の支援は馬鹿げて有害です」

「あいつの協力なんて有害無益だ」
“I'm so impatient to break it off.”
「私は分かれたくて我慢できない」

「今すぐにでも縁を切りたいくらいだ」  
His eyes flashed with a fierce light
彼の目ははげしい光できらめいた。

その目は険しさを帯びて光っていた。
John was in a state of great agitation.
ジョンは大きな動揺の状態のなかにいました。           ↓ ジョンはひどく動揺した。
“I don't want to alarm you unnecessarily.”
私は不必要にあなたを注意したくありません。

「君によけいな事を言って不安にさせようというわけではないんだ」
But, you should use all proper caution
「適切な注意をすべて使用するべきです」

「でも用心するに越したことはない」
“With all my heart, Mike", said John.”
「真心を込めて、マイク」とジョンは言った。

「いいともいいとも、マイク」 ジョンは答えた。
Mike's laughter reassured John.
マイクの笑いはジョンを安心させた。

マイクが笑ったので、ジョンは胸を撫で下ろした。

どうでしょうか? 翻訳というものは、いかに感性とクリエイティビティを必要とする創作活動であるか、またプロ翻訳者はいかに機械にはマネのできない素晴らしい力を持っているか、ということを改めて感じさせられます。

“one of her shoes”
を、「靴のうちの一つ」ではなく「靴の片方」と訳すなんて、一体どうやって機械に期待するのでしょう?
“How does that strike you?”
を、「どうだ参ったか」とするなんて、なんと芸術的な技なのでしょうか。
“He began rather timidly.”
を、「ジョンはおそるおそると切り出してみた」と訳すなんて、どんな分厚い辞書を使っても無理です。
その他、どの文を見ても、プロ翻訳による人手の翻訳の表現力には驚かされます。


 以上見てきたようなプロ翻訳の例のように、 “How does that strike you?”を「どうだ参ったか」、 “He began rather timidly.”を、「ジョンはおそるおそると切り出してみた」 と訳すというような訳例を自由自在にスピーディにサーチして参考にできたらどんなに便利なのでしょうか?そのような実際のプロ翻訳を手本として利用するという新しい発想から生まれましたのが、「TraTool」のフレーズサーチ(訳例サーチ)で、そのサンプル辞書・対訳をご紹介しているのが、「怒涛の訳例辞書」です。

 特筆すべきは、プロの訳例から日本語の表現を参考にするだけではなく、日本人には難しい日英翻訳等の日本語から外国語方向への翻訳ができるようになった!ことです。辞書では引くことのできないネイティブの言い回しが自在に参照できるようになるのです。

5.専門分野の用語にも
これまでは文芸的な例ばかり出してきましたが、全く同じことが産業翻訳における専門分野の翻訳にも言えるのです。専門用語の訳出や言い回しも、単語単位で決まらないことが多く、専門用語辞書を使っても難しいものですが、簡単にサーチすることができます。 医薬分野を例にします。

「 porcine reproductive and respiratory syndrome」
を、翻訳者の間でも定評のある大型の英和辞書を使って調べてみます。

porcine 豚の、豚に似た、豚のような;不潔な、いやしい、貪欲な、意地汚い
reproductive 再生の、再現する;生殖の;多産の、生殖を行う者;生殖階級の個体
respiratory 呼吸(性)の、呼吸のための
syndrome 症候群;一連の徴候、一定の行動様式  レトロウイルス

「豚の再生及び呼吸性の症候群」? 悩みます。これらそれぞれの単語についての日本語訳候補のうち、どのような組み合わせによって正しい訳をあてるのは大変なことです。「えい!」と推測で選んだものが当たっていれば良いのですが、ほとんどの場合はずれてしまいます。 次は、同じく定評のある医学分野の専門辞書で調べてみます。

porcine ブタの
reproductive 生殖の、繁殖の、再現の
respiratory 呼吸(性)の
syndrome 症候群

専門辞書は分野が限定されているので、先ほどの汎用辞書に比べて訳語がすっきりしています。でもそれでも正解を導き出すのは困難です。
定訳は「豚繁殖・呼吸障害症候群」です。辞書からこの訳を導き出すのはほぼ不可能といえます。 単語単位を基本とする「辞書」の宿命です。そこで、そういう言い回しを知っているか知らないか―つまり、翻訳者個人としての専門分野の知識・経験が大きな問題になります。さらに言えば、例えば医薬と一口にいってもその範囲は気が遠くなるほど広く、かつ日進月歩で新しい言葉が生れまるなかで、どんなスーパーマンでもある分野の言葉をすべて覚えることは不可能です。結果、どのようなプロ翻訳者でも未知の用語のサーチに非常に多くの時間をとられます。

フレーズサーチは、対訳のDBから、単語ではなくチャンクの単位でサーチするという新しい方法論を採用しています。原文のなかで指定されたワードの前後を自動的に参照し、チャンク単位で最も近いフレーズを含む対訳をサーチします。これによって、翻訳者にとって難題である専門用語のリサーチ作業からの開放を目指すものです。「怒涛の訳例辞書」はフレーズサーチのように自動的に前後の語句の一致判定はできませんが、チャンク単位でのサーチの疑似体験はできます。

6、チャンクとコロケーション
 ここでチャンクについてもう少し突っ込んで話をします。具体的にはチャンクとは、次のような種類のものを指します。

a) 単語
b) 連語
  熟語ともいいます。(例)at once , weather forecast
c) 定型表現 (例)There you go again! , Nice to meet you.
d) 定型構文 (例)so … that ….
e) コロケーション
・名詞句(形容詞+名詞など) (例)嫌な臭い、faint smell
・動詞句(名詞+動詞など) (例)湯を沸かす、eat soup
など

 特にコロケーションは重要です。
 コロケーションとは、単語と単語の組み合わせ(相性)のことです。例えば、名詞句で「形容詞+名詞」の組み合わせの例でいうと、「臭い」と「香り」はどちらもsmellを使う場合がありますが、日本語で「嫌な臭い」とはいっても「嫌な香り」とは普通言いません。「かすかな」の英語はfaintもlurkingも使いますが、「かすかな臭い」というときは”faint smell”の方が自然です。
 動詞句で、名詞+動詞の例でいうと「湯を沸かす」と言いますが「湯をあぶる」とはいいません。「スープを飲む」は英語で”eat soup”といいます。
 他に、副詞+形容詞、動詞+副詞、主語+動詞などのコロケーションがあります。
 コロケーションは、他のチャンクの種類に比べて数が多いことから特に難問です。ネイティブとノン・ネイティブの間で顕著に差がつくところです。

チャンクの中でも特に、名詞句・動詞句のコロケーションは重要です。

7.10億訳例プロジェクト
 最後に「10億訳例プロジェクト」について説明します。すでに賢明な皆様は察してられると思いますが、それは、10億のチャンク訳例を蓄積したデータベースをつくろうという試みです。単語のみならず、連語、フレーズ、文章を問わず、10億の対訳(チャンク)をデータベースにしようという壮大なプロジェクトです。プロジェクトには、数億円の予算が組まれています。
 そして、「怒涛の訳例辞書」はプロジェクトの成果の一部です。まだ実験段階のβ版ですが、チャンク訳例の便利さはわかるくらいの量にはなっていると思います。
 10億の訳例チャンクデータベースができあがると外国語の翻訳やライティングをするには夢のようなツールになりますでしょう。そして当プロジェクトが、企業、研究機関、マスコミ、出版など、世の国際コミュニケーションの推進に寄与することを目指しています。


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